2001.01.12
漸く東京へ…
「高校サッカー取材日記」
〜その6〜
競技場を後にした時は既に日が傾いていた。北大社駅に着くと目の前で列車が出発していった。30分待ちか、そう思いながら切符を買いホームのベンチに座った。間もなくホームの電気が点いた。もうすっかり黄昏時である。お客がもう一人、鼻歌を歌って列車を待っている。30分後に列車が駅に滑り込んできた時も、Iアナが駅に来る気配は無かった。競技場で試合を終えた選手の取材が続いていたっけ。後日Iアナに話を聞くと、取材を済ませ私から聞いた道順通りに進んだものの道に迷ってしまい、人に聞こうにもすっかり日が暮れて人気が無く、だいぶ心細い思いをされたそうだ。もう車窓から景色は見えない。
西桑名駅からJRの桑名駅に歩いていく途中、お腹が空いてきた。しかしただ空腹を満たしたいと思ったわけではなかった。無性に温かいご飯が食べたくなったのだ。振り返ってみると、取材行脚中まる2日間、温かいご飯を食べていない。口にしたのは弁当かファストフードで、湯気の上るご飯に箸をのばしていないではないか。草津に泊まった夜も、持ち帰り専門の鮨店で980円の握りを買って、宿の部屋で食べたのだった。その日は確かに鮨が食べたかったので満足していたのだが、今は温もりを感じる食事に飢えてしまっていたのだ。
桑名から名古屋まで快速に乗る。「席が空いている、ラッキー」と思って座った頭上には「指定席」の札。仕方なく席を立つ。私同様知らずに座った乗客が車掌から指摘されて席を立つ。
疲れていた。名古屋駅に着き、もう我慢ならなかった。駅ビルの地下に駆け込み、名古屋名物、味噌カツ定食を頼む。店は混んでいたのだが、壁に面した席が一箇所だけ空いていたのは運が良かった。酒を飲みながら歓談する声に混じって、英語も聞こえてくる。水を一服して見上げた所に見つけたこの一行、嬉しかった。
「ご飯、きゃべつ、おかわり自由です。」
10分程して定食が運ばれてきた。蓋を開けると白い湯気が立ち上り、ふっくり炊き上がったご飯が顔を出した。夢中で頬張る。美味い美味い。味噌汁もカツも温かい。やはり日本人は米である。カツを半分残し、店員にご飯のおかわりを頼んだ。おかわり…、弁当では味わえない食卓の雰囲気を味わい、お腹も心も漸く満たされた。
名古屋から新幹線で東京に向かう。窓に景色でなく自分の顔が映る状態で話し相手もいないのでは、座席を仮の書斎か仮の寝床にするしかない。私は仮の寝床にしようとしたが、寝付けない。デッキへ繋がる扉の上に橙色で流れるニュースの文字を眺めるともなく見つめる内に、新幹線は東京に到着した。宿へ入った時は夜の10時近かった。
(いよいよ郡山高校の取材篇へ)
〜その6〜
競技場を後にした時は既に日が傾いていた。北大社駅に着くと目の前で列車が出発していった。30分待ちか、そう思いながら切符を買いホームのベンチに座った。間もなくホームの電気が点いた。もうすっかり黄昏時である。お客がもう一人、鼻歌を歌って列車を待っている。30分後に列車が駅に滑り込んできた時も、Iアナが駅に来る気配は無かった。競技場で試合を終えた選手の取材が続いていたっけ。後日Iアナに話を聞くと、取材を済ませ私から聞いた道順通りに進んだものの道に迷ってしまい、人に聞こうにもすっかり日が暮れて人気が無く、だいぶ心細い思いをされたそうだ。もう車窓から景色は見えない。
西桑名駅からJRの桑名駅に歩いていく途中、お腹が空いてきた。しかしただ空腹を満たしたいと思ったわけではなかった。無性に温かいご飯が食べたくなったのだ。振り返ってみると、取材行脚中まる2日間、温かいご飯を食べていない。口にしたのは弁当かファストフードで、湯気の上るご飯に箸をのばしていないではないか。草津に泊まった夜も、持ち帰り専門の鮨店で980円の握りを買って、宿の部屋で食べたのだった。その日は確かに鮨が食べたかったので満足していたのだが、今は温もりを感じる食事に飢えてしまっていたのだ。
桑名から名古屋まで快速に乗る。「席が空いている、ラッキー」と思って座った頭上には「指定席」の札。仕方なく席を立つ。私同様知らずに座った乗客が車掌から指摘されて席を立つ。
疲れていた。名古屋駅に着き、もう我慢ならなかった。駅ビルの地下に駆け込み、名古屋名物、味噌カツ定食を頼む。店は混んでいたのだが、壁に面した席が一箇所だけ空いていたのは運が良かった。酒を飲みながら歓談する声に混じって、英語も聞こえてくる。水を一服して見上げた所に見つけたこの一行、嬉しかった。
「ご飯、きゃべつ、おかわり自由です。」
10分程して定食が運ばれてきた。蓋を開けると白い湯気が立ち上り、ふっくり炊き上がったご飯が顔を出した。夢中で頬張る。美味い美味い。味噌汁もカツも温かい。やはり日本人は米である。カツを半分残し、店員にご飯のおかわりを頼んだ。おかわり…、弁当では味わえない食卓の雰囲気を味わい、お腹も心も漸く満たされた。
名古屋から新幹線で東京に向かう。窓に景色でなく自分の顔が映る状態で話し相手もいないのでは、座席を仮の書斎か仮の寝床にするしかない。私は仮の寝床にしようとしたが、寝付けない。デッキへ繋がる扉の上に橙色で流れるニュースの文字を眺めるともなく見つめる内に、新幹線は東京に到着した。宿へ入った時は夜の10時近かった。
(いよいよ郡山高校の取材篇へ)
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