2001.01.10
練習試合の会場に向かう…
ズームイン!!朝!予告編を更新しました。良ければお立ち寄りを。
「高校サッカー取材日記」
〜その4〜
目指す北大社に行くには、桑名駅から近鉄の西桑名駅発の列車に乗り換えねばならない。近鉄の中には桑名駅に乗り入れている線もあるので、一応その乗り入れホームまで行って近鉄の駅員に聞いた。
「済みません、『きたたいしゃ』へ行く列車はどこから出ていますか?」
「ああ、『きたおおやしろ』ですか?それならあちらへ200m程行きますと西桑名駅がありますので、そちらへ行って下さい。」
むむむ、北大社は「きたたいしゃ」ではなく「きたおおやしろ」と読むのか。旅の恥はかき捨てだ。但しこれ以上恥をかきたくなかったので、これから乗る「北勢線」の読み方は確認せず仕舞いだった。
それにしても僅か200mしか離れていないなら、同じ鉄道、どうして桑名駅に乗り入れないのか不思議であった。ほかの近鉄の路線はしっかり乗り入れているのだから。そんな疑問を抱きつつ、西桑名駅まで行くと、正午まで列車は無かった。北大社駅着が0時27分、試合開始が午後0時半過ぎだから、練習試合の最初の10分位を見損ねてしまうかも知れない。しかし鉄道で27分かかる場所までタクシーを使ったとして列車より早く着くとも限らないので、駅前のファストフード店で腹ごしらえだ。店内にはアニメの人気キャラクター付きクリスマスセットの予約申しこみ表が貼ってある。選手や監督、我々取材者にとってはクリスマスも曜日感覚もあったものではない。
ハンバーガーを頬張った後、駅で切符を買うと折り返し列車が入ってきた。ホームが1つしか無い為、乗客は改札口の外で行列を作っている。西桑名で客が降りるのを待って、改札を通された。そして列車に乗ってみて、初めて桑名駅に乗り入れていない理由が分かった。車幅が狭いのである。
最初は錯覚かと思ったが、網棚が妙に狭いのと座席に座ってみて錯覚ではない事に気付いたのだ。幅が4m程あるかないかで、両側の扉を開けておけば、幅跳びの選手なら左の扉口から右の扉口まで列車に足をつける事無く飛び越えてしまうであろう。座席に腰を下ろすと向かいの客の膝と自分の膝との間が人一人分位しか隙間が無いのだ。昔の路面電車がそのまま専用の鉄路を持っているという感じである。
どうせ仕事をするなら楽しんで仕事をしたい私としては、ここにも旅「情」を感じた。嬉しい。今後の新路線には絶対採用されないであろう車幅の、ちょっぴりレトロな雰囲気を醸す列車で取材に赴けるとは…。
正午、各乗降口の一枚扉がゆっくりと閉まると、列車は動き出した。車内は女性の声が入ったテープで駅案内だ。
「次は、馬道(うまみち)、馬道。」
駅名もたまらなく良い。どんな歴史を持った駅なのだろう。しかもその後も西別所、蓮花寺、北大社と悠久の時の流れに思いを馳せてみたくなる名前が続く。急カーブで車輪とレールが擦れて軋む音も、真っ直ぐなのに加速をすると左右にぐらぐら揺れる揺れ具合も、窓から顔や手を出したらとんでもない事になるくらい、軒先や塀っ端を縫うように走り抜ける車窓も、全てが旅情をかきたててくれる。
「北大社というくらいだから、駅にいきなり鳥居があって大きい神社へと500m位参道が続いているのか、はたまた駅舎が実は神社の一角になっているのかも知れない。」
列車は広い田畑に囲まれたり、家々の間をすり抜けたりしながら、終点の北大社へと向かっていった。
(まだ練習試合の会場に着かないのでつづく)
「高校サッカー取材日記」
〜その4〜
目指す北大社に行くには、桑名駅から近鉄の西桑名駅発の列車に乗り換えねばならない。近鉄の中には桑名駅に乗り入れている線もあるので、一応その乗り入れホームまで行って近鉄の駅員に聞いた。
「済みません、『きたたいしゃ』へ行く列車はどこから出ていますか?」
「ああ、『きたおおやしろ』ですか?それならあちらへ200m程行きますと西桑名駅がありますので、そちらへ行って下さい。」
むむむ、北大社は「きたたいしゃ」ではなく「きたおおやしろ」と読むのか。旅の恥はかき捨てだ。但しこれ以上恥をかきたくなかったので、これから乗る「北勢線」の読み方は確認せず仕舞いだった。
それにしても僅か200mしか離れていないなら、同じ鉄道、どうして桑名駅に乗り入れないのか不思議であった。ほかの近鉄の路線はしっかり乗り入れているのだから。そんな疑問を抱きつつ、西桑名駅まで行くと、正午まで列車は無かった。北大社駅着が0時27分、試合開始が午後0時半過ぎだから、練習試合の最初の10分位を見損ねてしまうかも知れない。しかし鉄道で27分かかる場所までタクシーを使ったとして列車より早く着くとも限らないので、駅前のファストフード店で腹ごしらえだ。店内にはアニメの人気キャラクター付きクリスマスセットの予約申しこみ表が貼ってある。選手や監督、我々取材者にとってはクリスマスも曜日感覚もあったものではない。
ハンバーガーを頬張った後、駅で切符を買うと折り返し列車が入ってきた。ホームが1つしか無い為、乗客は改札口の外で行列を作っている。西桑名で客が降りるのを待って、改札を通された。そして列車に乗ってみて、初めて桑名駅に乗り入れていない理由が分かった。車幅が狭いのである。
最初は錯覚かと思ったが、網棚が妙に狭いのと座席に座ってみて錯覚ではない事に気付いたのだ。幅が4m程あるかないかで、両側の扉を開けておけば、幅跳びの選手なら左の扉口から右の扉口まで列車に足をつける事無く飛び越えてしまうであろう。座席に腰を下ろすと向かいの客の膝と自分の膝との間が人一人分位しか隙間が無いのだ。昔の路面電車がそのまま専用の鉄路を持っているという感じである。
どうせ仕事をするなら楽しんで仕事をしたい私としては、ここにも旅「情」を感じた。嬉しい。今後の新路線には絶対採用されないであろう車幅の、ちょっぴりレトロな雰囲気を醸す列車で取材に赴けるとは…。
正午、各乗降口の一枚扉がゆっくりと閉まると、列車は動き出した。車内は女性の声が入ったテープで駅案内だ。
「次は、馬道(うまみち)、馬道。」
駅名もたまらなく良い。どんな歴史を持った駅なのだろう。しかもその後も西別所、蓮花寺、北大社と悠久の時の流れに思いを馳せてみたくなる名前が続く。急カーブで車輪とレールが擦れて軋む音も、真っ直ぐなのに加速をすると左右にぐらぐら揺れる揺れ具合も、窓から顔や手を出したらとんでもない事になるくらい、軒先や塀っ端を縫うように走り抜ける車窓も、全てが旅情をかきたててくれる。
「北大社というくらいだから、駅にいきなり鳥居があって大きい神社へと500m位参道が続いているのか、はたまた駅舎が実は神社の一角になっているのかも知れない。」
列車は広い田畑に囲まれたり、家々の間をすり抜けたりしながら、終点の北大社へと向かっていった。
(まだ練習試合の会場に着かないのでつづく)
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